2025年1月13日、東京女子医科大学の元理事長・岩本絹子さん(78歳)が背任容疑で逮捕されるというニュースが流れました。
しかし、この事件の背景には、もう一つの驚くべき事実が隠されていたのです。
それは、岩本絹子元理事長と元宝塚歌劇団月組トップスター・彩輝なおさんとの深い「おばさま」関係でした。
宝塚歌劇団には古くから「おばさま」と呼ばれる支援者制度があり、タカラジェンヌたちの芸を支える重要な役割を果たしてきました。
しかし今回の事件は、その美しい伝統が現代社会のコンプライアンス意識と衝突した時、どのような問題が生じるかを浮き彫りにしています。
今回の記事では、どのような報道がされたかまとめていきたいと思います。
彩輝なおさんという人物
彩輝なおさん(本名:矢野小恵子さん、1971年1月7日生)は、神奈川県横浜市港北区で釣具店を営む家庭の4姉妹の長女として生まれました。
天海祐希さんの熱烈なファンであったことが宝塚音楽学校への志願のきっかけとなったとされています。
1990年、彩輝なおさんは宝塚歌劇団76期生として入団しました。
入団時の成績は34番(40人中)でしたが、初舞台『ベルサイユのばら』から徐々にその才能を開花させ、入団2年目には『ベルサイユのばら』新人公演でアンドレ役に大抜擢されました。
この時、本役を演じていたのは憧れの天海祐希さんでした。
彩輝なおさんの最大の魅力は、群を抜いた美貌とミステリアスでクールな佇まいでした。
月組から星組、そして専科を経て、再び月組に戻りトップスターの座に就くという異例の経歴を持ちます。
2004年にトップスターに就任し、2005年5月22日の退団公演『エリザベート』でトート役を演じました。
この退団公演では、妹で元雪組の彩那音さんが本公演で少年ルドルフ役、新人公演でルキーニ役で出演し、美しい姉妹ジェンヌとして話題を集めました。
岩本絹子さんと「おばさま」関係の実態
岩本絹子さんは1946年生まれで、東京女子医科大学創立者・吉岡彌生さんの一族として生まれました。
1973年に同大学を卒業後、開業医としてのキャリアを積み、2013年に同窓会組織「至誠会」の会長に就任、翌年には東京女子医科大学の副理事長となり、2019年に理事長の座に就きました。
文春オンラインの報道によれば、岩本さんは熱烈な宝塚ファンとして知られており、特に彩輝なおさんに対しては格別の思いを抱いていたとされています。
宝塚歌劇団における「おばさま」とは、タカラジェンヌの後援者の俗称で、大相撲のタニマチと同様、幅広い交友関係と豊富な資金力を持つ支援者のことを指します。
岩本さんは、まさにこの「おばさま」として彩輝なおさんを支援していたと報じられています。
同誌の報道によると、岩本さんは彩輝なおさんの無名時代から月組トップになるまで、一貫して応援し続けていました。
現役時代には、公演後に帝国ホテルや六本木の高級店に彩輝なおさんを招き、一緒に食事を楽しんでいたといいます。
その際の岩本さんの満足げな表情が印象的だったと、元側近は振り返っています。
この関係を象徴する場面が、2019年10月にホテルオークラ東京で開催された岩本さんの理事長就任祝賀会でした。
各界の著名人が招待された華やかなパーティーで、ゴシックスタイルの黒いドレスをまとった彩輝なおさんが登場し、岩本さんに薔薇の花束を贈呈したのです。
文春オンラインが『女醫會』誌面の写真を引用して報じたところによると、
花束を受け取った岩本さんが少女のようにはにかんだ笑顔を見せたこの瞬間は、二人の特別な関係を物語る象徴的なシーンとなりました。
宝塚における「おばさま」制度は、タカラジェンヌの芸と美を支える重要な文化的背景として機能してきました。
個人的な支援であれば何ら問題はありませんが、今回の事件では、その境界線が曖昧になってしまったところに大きな問題があったのです。
事件の全貌~公私混同の構図~
東京女子医科大学を巡る疑惑は、大きく三つに分けられます。
第一の疑惑は、至誠会(同窓会組織)から東京女子医科大学への出向職員に関する問題です。
第三者委員会の要約版によれば、至誠会から大学法人経営統括部に「出向していたとされる者」への人件費約3.8億円の妥当性が問題として指摘されました。
出向契約・就業実態・給与額の整合性が主な争点となっています。
具体的には、最高で月額150万円という教授クラスの2倍近い破格の給与が支払われていた記録がありながら、実際に職員が受け取っていたのは月額20万円から40万円程度でした。
つまり、最大で月100万円もの差額が「消失」していたのです。
さらに、2018年と2019年には夏のボーナスとして計1662万円が支払われた記録がありますが、職員たちは一円も受け取っていませんでした。
第二の疑惑は、彩輝なおさんの妹である彩那音さんの夫が代表を務める株式会社ケネス&セルジオとの不透明な契約です。
週刊文春の調査報道によると、2020年から2022年にかけて、この会社に対して2年間で1億円を超える業務委託費が支払われていました。
同社の登記上の事業目的は、不動産売買、コンピュータシステムの企画、芸能タレントの育成・マネジメントなど、病院運営とは縁遠い業種でした。
にもかかわらず、経営統括部の業務支援や理事長秘書業務全般として月額385万円、後に専属運転手費用を含めて月額451万円という高額な報酬が支払われていたとされています。
さらに問題なのは、この契約には稟議書が存在せず、理事会の議事録にも記載されていなかったことです。
専属運転手として契約されていたのは岩本さんの甥で、その報酬は月額66万円という准教授クラスの給与に相当する金額でした。
第三の疑惑は、建設工事関連の背任容疑です。
新校舎や新病棟の建設工事を巡り、大学から建築士に不正な報酬約1億2000万円を支払わせ、総額約2億8300万円の損害を与えたとして、岩本さんは逮捕・起訴されました。
これらの疑惑に共通しているのは、岩本さんが個人的な関係を利用して大学の資金を不適切に流用していたという構図です。
彩輝なおさん自身に直接的な責任はありませんが、その美貌と魅力が意図せずして事件の一端に関わることとなってしまったのです。
事件が与えた影響と現在
この事件が東京女子医科大学に与えた打撃は深刻でした。
創立120年を超える名門医科大学は、医師や看護師の大量退職に見舞われ、経営危機に陥りました。
報道によれば、2016年度から2022年度にかけて医師が881人から675人(206人減)、看護師が1117人から941人(176人減)となり、病床稼働率も約5割まで低下したとされています。
病床の許可数は1193床ですが、コロナ禍や人手不足の影響で稼働低下が深刻な問題となりました。
財政面でも深刻で、文春オンラインの報道では毎月2億円を超すペースで赤字が続いているとされ、
東京女子医科大学の事業報告書によると2023年度の経常収支差額は63億9900万円の赤字となりました。
職員からは「将来に希望が持てない」「労働条件や経営方針に納得できない」といった声が上がり、求人を出しても希望者が集まらない状況が続いています。
宝塚歌劇団への影響も軽視できません。
今回の事件により、伝統的な「おばさま」制度にダークなイメージがついてしまい、今後のタニマチ活動にも影響を与える可能性があります。
公私混同の批判を受けて、支援活動そのものが萎縮してしまうことが懸念されています。
彩輝なおさん自身も、法的責任はないものの、事件との関連で名前が報道されることによる風評被害は避けられません。
現在も舞台を中心に精力的な活動を続けている彩輝なおさんにとって、この状況は決して望ましいものではないでしょう。
2025年9月17日には、東京女子医科大学が岩本元理事長に対して約2億5290万円の損害賠償を求める民事訴訟を提起し、事件は新たな局面を迎えています。
まとめ
宝塚歌劇団の「おばさま」制度は、100年以上にわたってタカラジェンヌの芸と美を支えてきた文化的伝統です。
多くの支援者が健全な範囲でタカラジェンヌを応援し、日本の貴重な舞台芸術の発展に貢献してきました。
今回の事件は、あくまで一個人が公的な立場を悪用した特殊なケースであり、宝塚の伝統的な支援文化そのものに問題があるわけではありません。
彩輝なおさんについても同様です。
彼女は単に一人のファンから支援を受けていただけであり、その支援者が後に不正を行ったことに対して何ら責任を負うものではありません。
彩輝なおさんの人柄や魅力、宝塚での輝かしい業績、そして現在の女優としての活動は、この事件とは全く無関係の価値を持っています。
彼女が多くの人々に愛され続けているのは、その美しさと才能、そして人間性によるものであり、それらが事件によって損なわれるべきものでは決してありません。
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