宝塚歌劇団の歴史に燦然と輝く二人のトップスター、真琴つばささんと天海祐希さん。
一見すると先輩後輩という関係に見える二人ですが、実はその絆は単純な上下関係を遥かに超えた、特別なものでした。
競争の激しい宝塚の世界で培われた真琴つばささんと天海祐希さんの関係は、お互いの才能と人格を深く認め合う美しいものとして、今なお多くのファンに語り継がれています。
本記事では、二人の共演歴や印象的なエピソードを通して、この特別な関係の真相に迫ります。
真琴つばさと天海祐希の基本的な関係性
真琴つばささんと天海祐希さんの関係を理解するには、まず宝塚歌劇団での基本的な立ち位置を知る必要があります。
真琴つばささんは1985年に71期生として宝塚歌劇団に入団し、初舞台は花組『愛あれば命は永遠に』でした。
一方の天海祐希さんは1987年に73期生として入団、つまり真琴つばささんの2期後輩にあたります。
しかし、この先輩後輩関係は後に劇的な変化を遂げることになります。
真琴つばささんは最初花組に配属されましたが、1994年に月組へ組替えとなりました。
奇しくもこの時期は、天海祐希さんがトップスターにお披露目される記念すべき時でもあったのです。
運命的とも言えるこの組替えにより、真琴つばささんと天海祐希さんは同じ月組で活動することになり、宝塚史上に残る特別な関係が始まったのです。
花組時代の「暗黒時代」から月組への転機
真琴つばささんは花組時代を振り返り、自ら「暗黒時代」と表現しています。
当時の花組は有力なスター候補がひしめく激戦区でした。
同期には愛華みれさん、1期下には香寿たつきさんや紫吹淳さん、2期下には匠ひびきさんや姿月あさとさん(天海祐希さんの同期)など、将来のトップスター候補が多数在籍していました。
このような環境の中で、真琴つばささんはなかなか芽が出ない状況が続いていました。
しかし、1994年の月組への組替えが大きな転機となります。
この組替えは偶然にも天海祐希さんのトップお披露目公演の時期と重なりました。
月組に移った真琴つばささんは、天海祐希さんとの出会いについて後にこう語っています。
「彼女が入ってきたときから、『別格の人が入ってきたな』という感じがありました。宝塚にとっても新しい風ですよね。私もその風の中に入って、一緒に盛り上がっていけたという思いがあります。彼女の持っているオーラに吸い寄せられたという感じもありますね」
さらに真琴つばささんは、天海祐希さんの人柄についても高く評価しており、「天海さんは本当に気遣いの人で、すごく心地よくいさせてもらえたなと思いました」とコメントしています。
この言葉からは、真琴つばささんと天海祐希さんの関係が単なる競争相手ではなく、お互いを尊重し合う特別なものだったことが窺えます。
共演作品で見る真琴つばさと天海祐希の関係
『風と共に去りぬ』(1994年)での特別な配役
真琴つばささんと天海祐希さんの関係を語る上で欠かせないのが、1994年の月組公演『風と共に去りぬ』での共演です。
この作品で天海祐希さんは主人公レット・バトラーを演じ、真琴つばささんは「スカーレットⅡ」という特殊な役を担当しました。
スカーレットⅡとは、宝塚版『風と共に去りぬ』独特の演出で、主人公スカーレット・オハラの分身、つまり心の中の声を表現する重要な役でした。
真琴つばささんは男役でありながらこの女役を演じ、麻乃佳世さんが演じるスカーレットとの絶妙な掛け合いで観客を魅了しました。
当時研7(入団7年目)だった天海祐希さんは、27歳という若さでありながら色気あるバトラー役を見事に演じ切り、そのスター性を存分に発揮しました。
真琴つばささんとの舞台での息の合った演技は、二人の信頼関係の深さを物語るものでした。
『ME AND MY GIRL』(1995年)天海祐希の退団公演
1995年の『ME AND MY GIRL』は、天海祐希さんと麻乃佳世さんのサヨナラ公演として上演されました。
この記念すべき公演で、真琴つばささんはジャッキー役を演じましたが、なぜか男役でありながら女役での出演でした。
真琴つばささんは後にこの公演について「天海さんの包容力がすごい!あんな風にされたい!って、みんなが思うんじゃないですか?」とコメントしており、天海祐希さんの人間性の大きさと舞台での魅力を絶賛していました。
このように、真琴つばささんと天海祐希さんの関係は、共演を重ねるごとに深まっていき、お互いの才能を認め合う特別な絆へと発展していったのです。
真琴つばさが語った「嫉妬」の真相
真琴つばささんと天海祐希さんの関係を語る上で最も印象的なエピソードの一つが、真琴つばささんがフジテレビの特番で語った「嫉妬」の告白です。
この番組で真琴つばささんは、天海祐希さんへの率直な気持ちを明かしました。
トップお披露目公演での電話エピソード
真琴つばささんがトップスターになって初めてのお披露目公演初日の打ち上げ中、天海祐希さんから電話がかかってきたエピソードは特に有名です。
天海祐希さんは「その時どうだった?孤独だったでしょ?」と真琴つばささんに語りかけました。
この「孤独」という表現について、真琴つばささんは深い洞察を示しています。
宝塚の公演では、最後にトップスターが背中に大きな羽を背負って大階段から降りる場面がありますが、その時に観客はもちろん、舞台に立っている組員全員もトップスターを見つめます。
つまり、正面を向いているのはトップスター一人だけという、まさに「孤独」な瞬間なのです。
「本当のスター」としての天海祐希
真琴つばささんは自分と天海祐希さんの違いについて、非常に的確な分析をしています。
「自分の場合は他の仲間・出演者がいたからこそ輝けるが、天海さんの場合はそうではなく一人であっても輝ける」として、天海祐希さんこそが「本当のスター」であると語りました。
この言葉は、真琴つばささんの天海祐希さんに対する深い理解と尊敬の念を表しており、単なる嫉妬を超えた、同じ道を歩む者同士の真摯な関係性を物語っています。
真琴つばささんと天海祐希さんの関係の真髄がここに現れていると言えるでしょう。
異例の昇格と先輩後輩の逆転
真琴つばささんと天海祐希さんの関係において最も特筆すべきは、通常では考えられない昇格順序が起こったことです。
宝塚歌劇団では通常、入団から10年以上かけてトップスターになるのが一般的ですが、天海祐希さんは入団からわずか6年半(7年目)で史上最速・最年少の25歳でトップスターに就任しました。
一方、真琴つばささんがトップスターになったのは1997年、天海祐希さんと久世星佳さんの後でした。
つまり、先輩である真琴つばささんよりも後輩の天海祐希さんが先にトップの座に就いたのです。
このような状況は通常であれば複雑な感情を生みがちですが、真琴つばささんは天海祐希さんの実力とスター性を素直に認め、むしろその才能に敬意を表していました。
また、天海祐希さんも真琴つばささんに対して常に敬意を払い、気遣いを忘れませんでした。
真琴つばささんは月組に移籍した際の印象について「花組では高い方だったんですけど、月組にいったら天海祐希さんも大きいし、姿月あさとさんも大きくって・・・初めて『小さいんだ』って思いました」と語っており、身長の違いすらも含めて新しい環境を受け入れていく様子が窺えます。
月組での序列と信頼関係
天海祐希さんがトップスターだった当時の月組は、非常に層の厚い組として知られていました。
トップスターの天海祐希さんを筆頭に、2番手に久世星佳さん、3番手に真琴つばささん、4番手に姿月あさとさん(天海祐希さんの同期)という豪華な顔ぶれでした。
真琴つばささんは花組からの組替えでありながら、すぐに3番手というポジションに位置づけられました。
これは天海祐希さんをはじめとする月組の先輩たちが、真琴つばささんの実力を認めていた証拠と言えるでしょう。
また、真琴つばささんが月組の雰囲気に素早く馴染めたのは、天海祐希さんの温かい配慮があったからこそです。
真琴つばささんと天海祐希さんの関係は、単なる競争相手ではなく、お互いを高め合う良きライバルとしての側面も強く持っていました。
ディナーショーでの継続的な絆
2001年に開催された真琴つばささんの退団記念ディナーショー「TSUBASA伝説」では、歴代の主演男役からの温かいメッセージが寄せられました。
その中には、既に退団していた天海祐希さんからのメッセージも含まれていました。
このディナーショーには高汐巴さん、大浦みずきさん、安寿ミラさん、真矢みきさんなど錚々たるメンバーが出演し、天海祐希さんと久世星佳さんからはメッセージ映像が流されました。
退団後も真琴つばささんを気にかけ、メッセージを寄せる天海祐希さんの行動からは、二人の関係の深さと継続性が窺えます。
このエピソードは、真琴つばささんと天海祐希さんの関係が一時的なものではなく、宝塚を離れた後も続く深い絆であることを示しています。
まとめ
真琴つばささんと天海祐希さんの関係は、宝塚歌劇団の歴史の中でも特別な意味を持つものです。
先輩後輩という枠を超えて、お互いの才能と人格を深く認め合った二人の絆は、競争の激しい宝塚の世界において、いかに美しい人間関係を築くことができるかを示す貴重な例と言えるでしょう。
後輩でありながら先にトップスターになった天海祐希さんに対し、真琴つばささんが素直に「嫉妬」を認めつつも深い尊敬を表現したエピソードは、両者の人格の高さを物語っています。
また、天海祐希さんの真琴つばささんに対する継続的な気遣いと敬意も、この関係の美しさを際立たせています。
真琴つばささんと天海祐希さんの関係は、宝塚歌劇団が育む人間関係の素晴らしさを象徴するものとして、今後も多くの人々に愛され、語り継がれていくことでしょう。
二人が築いた特別な絆は、宝塚の精神そのものを体現した、永遠に色褪せることのない美しい物語なのです。
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