2025年6月、宝塚歌劇団雪組トップ娘役・夢白あやさんの退団発表は、多くのファンに衝撃を与えました。
103期生として入団し、宙組から雪組への組替えを経て、トップ娘役の座を掴んだ彼女の軌跡は、まさに現代宝塚の成功例の一つと言えるでしょう。
入団成績4番という優秀な成績で宝塚の世界に足を踏み入れてから約9年、夢白あやさんはどのようにしてトップ娘役の地位を築き上げたのでしょうか。
本記事では、彼女の宝塚人生を時系列で振り返り、組替えの成功、そして2026年2月の退団に至るまでの道のりを詳しく解説します。
【年表】夢白あやさんの宝塚キャリア
2015年4月 – 宝塚音楽学校入学2017年3月 – 音楽学校卒業、103期生として入団(成績4番)2017年4月 – 初舞台「幕末太陽傳/Dramatic “S”!
」、宙組配属2018年 – 阪急阪神初詣ポスターモデル、新人公演初ヒロイン2019年 – バウホール初ヒロイン「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」2020年9月16日 – 雪組へ組替え2022年8月30日 – 雪組次期トップ娘役発表2022年12月26日 – 雪組トップ娘役就任2023年2月 – お披露目公演「BONNIE & CLYDE」2024年10月 – 朝美絢さんとの新コンビスタート2025年6月23日 – 退団発表2026年2月22日 – 退団予定
入団から組替えまで:宙組時代の輝かしい経歴
宙組での快進撃
夢白あやさんの初舞台は2017年4月の雪組公演「幕末太陽傳/Dramatic “S”!
」でしたが、その後宙組に配属となり、本格的な宝塚人生がスタート。
宙組配属後の夢白あやさんの活躍は目覚ましいものでした。
2017年8月の「神々の土地」では、組配属後わずか1作目にして新人公演でヒロイン級のイリナ役に大抜擢。
これは103期生初の快挙でした。
2018年には、入団2年目という異例の早さで阪急阪神初詣ポスターモデルに起用されます。
この初詣ポスターは「トップへの登竜門」とも呼ばれる名誉ある抜擢で、将来のトップ娘役候補としての期待の高さを物語っていました。
続く2018年10月の「異人たちのルネサンス」では新人公演初ヒロインを務め、2019年の「オーシャンズ11」でも2度目の新人公演ヒロインに抜擢。
さらに同年9月の「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」では、バウホール公演初ヒロインも経験するなど、着実にキャリアを積み重ねていきました。
2020年、雪組への組替え
しかし、2020年9月16日付で突然の組替えが発表されます。
宙組から雪組への移動でした。
当時、宙組では次期トップ娘役候補として育成されていた夢白あやさんでしたが、上級生の存在や組内の状況により、新天地での再スタートを切ることになったのです。
この組替えは、当初ファンの間でも賛否両論がありました。
宙組での華々しい実績を考えると、なぜこのタイミングでの移動なのかという疑問の声も上がりましたが、結果的にこの決断が彼女の飛躍への転機となったのです。
雪組での成長とトップ娘役就任
組替え直後の試練と成長
雪組移籍当初、夢白あやさんは環境の変化に苦労しました。
本人も後に語っているように、稽古中に演出家から「夢白、どうした。ひどい」と指摘されることもあり、新しい環境への適応に時間を要しました。
しかし、雪組の先輩方、特に当時のトップスター彩風咲奈さんや朝美絢さんからの温かいサポートを受け、徐々に雪組の一員として馴染んでいきます。
組替え経験者である朝美絢さんからのアドバイスは特に心強く、後に退団会見でも感謝の気持ちを述べています。
雪組での初期作品では、2021年の「fff-フォルティッシッシモ-」でジュリエッタ・グイチャルディ役、「ヴェネチアの紋章」でオリンピア役など、徐々に重要な役を任されるようになりました。
そして2022年1月のバウホール公演「Sweet Little Rock ‘n’ Roll」では2度目のバウヒロインを務め、同年7月の「心中・恋の大和路」では東上公演初ヒロインという新たな実績を積み上げました。
2022年12月26日、ついにトップ娘役就任
2022年8月30日、待望の発表がありました。
夢白あやさんが雪組次期トップ娘役に決定したのです。
朝月希和さんの後任として、12月26日付での就任が発表されました。
これは103期生から初のトップ娘役誕生であり、宙組出身としても初の雪組トップ娘役という歴史的な意味を持つ就任でした。
相手役となるのは、彩風咲奈さん。
10期上の大先輩とのコンビに、当初は戸惑いもあったといいますが、彩風さんの「最初は理解できなかった部分もあったが、段々と魅力を感じるようになった」という言葉に表されるように、互いを認め合う素晴らしいパートナーシップを築いていきました。
お披露目公演「BONNIE & CLYDE」での華麗なスタート
2023年2月6日から3月1日にかけて御園座で上演された「BONNIE & CLYDE」が、彩風咲奈さんと夢白あやさんの新トップコンビのプレお披露目公演となりました。
1930年代アメリカを舞台にした骨太なミュージカルで、夢白あやさんは女優を夢見るウェイトレス・ボニー役を熱演。
初お披露目から「堂々とした新トップ娘役」「思っていた以上に素晴らしい」と高い評価を受け、彩風さんとの相性の良さも話題となりました。
観客からは「夢白あやの鮮烈プレお披露目」と称され、新時代の雪組への期待を大いに高めました。
トップ娘役としての任期と代表作
彩風咲奈さんとの黄金コンビ時代(2022-2024年)
夢白あやさんのトップ娘役としての任期は、大きく2つの時代に分けられます。
まず2022年12月から2024年10月までの約2年間は、彩風咲奈さんとのコンビで3作品を上演しました。
プレお披露目の「BONNIE & CLYDE」に続き、2023年7月の「仮面のロマネスク」では、ヴェネツィアを舞台にした華麗なロマンスを披露。
そして2024年7月の「ベルサイユのばら」では、マリー・アントワネット役という宝塚娘役の憧れの役を演じました。
特に「ベルサイユのばら」でのマリー・アントワネット役は、夢白あやさん自身が「転機となった」と語る重要な作品でした。
入団前に一度も「ベルばら」を観劇したことがなかった彼女が、いざ向き合ってみると「これだけ人の気持ちを動かす作品があるのだと感じた」といいます。
役として充実した日々を実感できたことが、後の退団決意への伏線となったのです。
朝美絢さんとの新たな章(2024年-)
2024年10月、彩風咲奈さんの退団に伴い、朝美絢さんが新トップスターに就任。
夢白あやさんは2人目の相手役として、新たなコンビでの活動をスタートさせました。
11月から12月にかけて上演された「愛の不時着」では、韓国ドラマの人気作品を宝塚版にアレンジした作品で、朝美絢さんとの息の合った演技を披露。
「美形コンビ」として話題を呼び、新生雪組の門出を華やかに飾りました。
しかし、この「愛の不時着」が夢白あやさんにとって朝美絢さんとの最初で最後のお披露目公演となりました。
2025年5月の「ROBIN THE HERO」を経て、2026年2月の「ボー・ブランメル~美しすぎた男~」「Prayer~祈り~」が最終公演となることが発表されたのです。
退団決意への道のり
夢白あやさんが退団を決意したのは、2024年の「ベルサイユのばら」東京公演千秋楽の日でした。
彩風咲奈さんが袴姿で大階段を降りてくる姿を見て、「次にそこに立つのは自分だな」と確信したといいます。
宝塚では「鐘が鳴る」と表現される、退団のタイミングを知らせる直感的な瞬間でした。
トップ娘役として合計5作品、約3年2ヶ月という任期は、雪組では標準的な長さとされています。
超路線娘役として長期間の活躍も期待されていましたが、「舞台人として娘役として区切りをつけることができたタイミング」として、潔い決断を下したのです。
次世代への継承と雪組の未来
有力候補たちの存在
夢白あやさんの後任については、まだ正式な発表はありませんが、ファンの間では105期生を中心とした次世代娘役たちに注目が集まっています。
特に注目されているのが、105期首席で入団した音彩唯さんです。
2020年に阪急阪神初詣ポスターモデルを務め、新人公演ヒロインも3回経験するなど、確実にキャリアを積み重ねています。
また、朝美絢さんとの別箱公演での相手役実績もあり、相性の良さも実証済みです。
同じく105期生では、現在星組で活躍し、次期星組トップ娘役に内定している詩ちづるさんの存在も大きく、105期生の層の厚さを物語っています。
雪組の伝統と継承
雪組のトップ娘役は、歴代「長居しない素晴らしい系譜」として知られています。
真彩希帆さん、朝月希和さん、そして夢白あやさんと、それぞれが短期間ながらも強烈な印象を残し、次の世代へとバトンを渡してきました。
この伝統は、組としての新陳代謝を促し、常に新鮮な魅力を保ち続ける原動力となっています。
夢白あやさんもこの流れを汲み、潔い退団決意により、次世代への道筋をしっかりと築いています。
まとめ
夢白あやさんの宝塚人生は、まさに挑戦と成長の連続でした。
103期生として華々しくデビューし、宙組での実績を積み重ねながらも、組替えという試練を乗り越え、最終的に雪組トップ娘役の座を掴んだ彼女の軌跡は、現代宝塚における成功例の一つと言えるでしょう。
入団から約9年、トップ娘役として約3年間という時間の中で、彼女は多くのファンに愛され、後輩たちの道標となる存在でした。
組替えという困難を経験したからこそ、環境の変化に悩む後輩たちへの理解も深く、温かいサポートを続けてきました。
2026年2月の退団まで残り数ヶ月となった今、夢白あやさんは「最後の日まで私らしく、そして宝塚の娘役として追求し続けたい」と語っています。
彼女の集大成となる最終公演「ボー・ブランメル~美しすぎた男~」「Prayer~祈り~」は、きっと多くのファンの心に永遠に残る舞台となることでしょう。
そして、彼女が築いた道を次世代の娘役たちが引き継ぎ、雪組の新たな歴史を紡いでいくことは間違いありません。
夢白あやさんの退団は一つの区切りですが、同時に雪組の未来への希望でもあるのです。
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