宝塚歌劇団史上でも極めて珍しい経歴を持つ星風まどかさん。
2つの異なる組でトップ娘役を務め、最終的には花組で26年ぶりの添い遂げ退団を実現した彼女の相手役ヒストリーは、まさに宝塚の夢物語そのものです。
真風涼帆さんから柚香光さんへと続く相手役の軌跡を辿りながら、なぜ星風まどかさんが「理想の娘役」と称されるのか、そして添い遂げ退団に至った美しい背景を詳しく解説します。
星風まどか、異例のトップ娘役キャリア
星風まどかさんは1996年11月11日生まれ、東京都国分寺市出身。
2014年に宝塚歌劇団100期生として入団し、入団時の成績は3番という優秀な成績でした。
幼い頃から宝塚ファンだった母親の影響で「お腹にいた頃から宝塚を観ていた」というほど宝塚が身近な存在だった星風まどかさんは、2008年の『ME AND MY GIRL』でラインダンスに感動し、音楽学校受験を決意したのです。
入団後は早くから頭角を現し、組まわり中の宙組公演『白夜の誓い』で、退団する凰稀かなめさん演じるグスタフ3世の少年時代役に抜擢されるなど、将来のスター候補として注目されていました。
2015年の宙組配属後は、新人公演初ヒロイン、バウホール公演初ヒロインと着実にキャリアを積み重ね、2017年11月20日付で宙組トップ娘役に就任しました。
この就任は100期生初のトップ誕生であり、さらに1998年に創設された宙組から生まれた初の生え抜きトップでもありました。
その後、専科を経由して花組トップ娘役にも就任するという、宝塚史上でも極めて稀な経歴を築いたのです。
トップ娘役として2つの組で活躍した星風まどかさんの存在は、まさに宝塚の多様性と可能性を象徴する存在と言えるでしょう。
宙組時代:真風涼帆との相手役関係
星風まどかさんの最初の相手役は、宙組8代目トップスターの真風涼帆さんでした。
2017年11月20日付でトップ娘役に就任した星風まどかさんは、翌2018年の『天は赤い河のほとり』『シトラスの風』で真風涼帆さんとのトップコンビ大劇場お披露目を果たしました。
「まかまど」の愛称で親しまれたこのコンビは、真風涼帆さんの男性的で力強い魅力と、星風まどかさんの清楚で上品な美しさが絶妙にマッチした理想的な組み合わせでした。
真風涼帆さんは「トップ・オブ・トップ」と称される実力派男役で、その重厚な演技力と圧倒的な存在感で観客を魅了。
一方の星風まどかさんは、相手役として真風涼帆さんの魅力を最大限に引き出す技術に長けており、決して前に出すぎることなく、絶妙なバランスを保つことができる娘役でした。
代表作品としては、2019年の『オーシャンズ11』や2021年の『アナスタシア』などがあります。
特に『アナスタシア』は星風まどかさんの宙組ラスト公演となり、タイトルロールを美しく演じ切りました。
約3年間の宙組トップ娘役時代を通じて、星風まどかさんは真風涼帆さんの相手役としての役割を完璧に果たし、宙組の黄金期を支えた重要な存在となったのです。
しかし、2021年2月22日付で星風まどかさんは専科へ異動となります。
この異動は当時大きな話題となりました。
トップ娘役の組替えは2006年の白羽ゆりさん以来15年ぶりという異例の人事だったからです。
後に潤花さんが真風涼帆さんの2人目の相手役として宙組トップ娘役に就任することになります。
花組時代:柚香光との運命的な相手役関係
専科異動からわずか4ヶ月後の2021年7月5日付で、星風まどかさんは花組へ異動し、花組トップ娘役に就任しました。
この時の相手役が柚香光さんです。
実は、この組み合わせには運命的な背景がありました。
星風まどかさんは退団会見で衝撃的な告白をします。
「ファン時代から大好き」「音楽学校時代から柚香光さんに憧れていた」と公言したのです。
つまり、星風まどかさんにとって柚香光さんとの相手役は、まさに夢の実現だったのです。
この告白により、なぜ星風まどかさんが花組異動を快く受け入れ、なぜあれほど幸せそうに見えたのかが全て理解できました。
「れいまど」の愛称で親しまれた柚香光さんと星風まどかさんのコンビは、ビジュアル的にも演技的にも抜群の相性を見せました。
柚香光さんのロマンチックで二次元的な美しさと、星風まどかさんのお人形のような可憐さが織りなす世界観は、まさに宝塚の理想形でした。
2人のプライベートでの仲の良さも話題となりました。
柚香光さんは「同じ匂いがするな」と星風まどかさんとの相性の良さを表現し、一緒に飼い犬の散歩をしたり、LINEで動画を送り合うなど、舞台上だけでなくプライベートでも深い絆で結ばれていました。
星風まどかさんも退団会見で柚香光さんからプレゼントされた華やかなピアスを身に着け、「柚香さんのパワーで落ち着きました」と笑顔で語る姿が印象的でした。
花組での代表作品には、『うたかたの恋』『鴛鴦歌合戦』『GRAND MIRAGE!
』、そして退団公演となった『アルカンシェル ~パリに架かる虹~』などがあります。
特に『鴛鴦歌合戦』では、星風まどかさん史上最もキュートな娘役を披露し、1番輝いているように見えたと多くのファンが証言しています。
花組26年ぶりの添い遂げ退団の意義
2023年8月15日、宝塚歌劇団から衝撃的な発表がありました。
花組トップスターの柚香光さんとトップ娘役の星風まどかさんが、2024年5月26日付で同時退団する「添い遂げ退団」を発表したのです。
添い遂げ退団とは、トップスターとトップ娘役が同じタイミングで退団することを指します。
花組での添い遂げ退団は、1998年の真矢みきさん・千ほさちさん以来、実に26年ぶりの出来事でした。
四半世紀ぶりという歴史的な意義を持つこの決断には、深い背景がありました。
柚香光さんは2023年2月、『うたかたの恋』上演中に退団を決意し、劇団と相談を重ねました。
そして3月の『二人だけの戦場』稽古中に星風まどかさんに退団の意向を伝えます。
この時の星風まどかさんの反応は即座でした。
「ご一緒させてください」と迷うことなく答えたのです。
星風まどかさんは後に「花組へ組替えになった時に、すでに『どこまでも柚香さんについていく』と決めていました」と明かしています。
憧れの柚香光さんとの相手役が実現した時から、添い遂げ退団を意識していたというのです。
柚香光さんから退団決意を告げられた際には「うれしくて、光栄でした」と語り、最後まで一緒にいられることへの純粋な喜びを表現しました。
この添い遂げ退団は宝塚ファンからも好意的に受け止められました。
2人の仲の良さが常に話題となっていただけに、「仲良きことは美しきかな」という評価が多く聞かれました。
宝塚歌劇110周年という記念の年に、花組で26年ぶりの添い遂げ退団が実現したことも、一つの美しい区切りとして捉えられています。
星風まどかが築いた相手役の理想像
星風まどかさんのトップ娘役としての在任期間は6年1ヶ月に及び、これは花總まりさん、愛希れいかさんに次ぐ歴代3位の長期記録です。
宙組で5作品、花組で5作品の計10作品でトップ娘役を務めた実績は、まさに宝塚史に残る偉業と言えるでしょう。
星風まどかさんが高く評価される理由は、その「相手を引き立てる技術」にあります。
ダンス、歌、芝居のすべてにおいて及第点以上の実力を持ちながら、決してトップスターの前に出すぎることなく、相手の魅力を最大限に引き出すことができる稀有な娘役でした。
真風涼帆さんという重厚な男役にも、柚香光さんというロマンチックな男役にも、それぞれ異なるアプローチで寄り添い、互角に立ち合いながらも絶妙なバランスを保つことができたのです。
多くの宝塚関係者や演劇評論家が星風まどかさんを「娘役の一つの完成形」「宝塚だからこそ生まれた舞台人」と評価するのは、このような技術と心構えがあったからこそです。
相手役としての理想像を体現し続けた星風まどかさんの存在は、後進の娘役たちにとっても大きな指標となることでしょう。
まとめ
星風まどかさんの相手役ヒストリーは、宝塚歌劇団の美しい伝統と夢の力を象徴する物語です。
真風涼帆さんとの「まかまど」時代から柚香光さんとの「れいまど」時代まで、常に相手役としての理想を追求し続けた彼女の姿勢は、多くの人々に感動を与えました。
特に、ファン時代からの憧れが現実となり、最終的に添い遂げ退団という美しい結末を迎えた柚香光さんとの関係は、宝塚の「夢の世界」を体現する完璧なストーリーでした。
26年ぶりの花組添い遂げ退団は、単なる偶然ではなく、2人の深い絆と星風まどかさんの純粋な愛情が生み出した必然だったのです。
2024年5月26日の退団から約1年が経った今、星風まどかさんは新たなステージで活躍を続けています。
しかし、宝塚で築き上げた相手役としての理想像と、添い遂げ退団という美しい物語は、宝塚歌劇団の歴史に永遠に刻まれ続けることでしょう。
星風まどかさんの相手役ヒストリーは、宝塚の魅力と可能性を改めて私たちに教えてくれる、かけがえのない宝物なのです。
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