2022年末、宝塚歌劇団から衝撃的な発表がありました。
花組で2番手羽根を背負っていた水美舞斗さんが、2023年4月28日付で専科へ異動するという人事です。
そしてさらに驚いたのが、2024年12月16日の大規模組替え発表で、水美舞斗さんが2025年4月28日付で宙組へ組替えされることが明らかになったことでした。
「なぜ花組の2番手だった水美舞斗さんが専科に?」「専科から宙組への異動にはどんな意味があるのか?」多くのファンがこうした疑問を抱いたのではないでしょうか。
本記事では、公表されている情報をもとに、水美舞斗さんの一連の人事異動について事実を整理し、その背景にある可能性を探ってみたいと思います。
これまでの経緯
水美舞斗さんは2009年に「花の95期生」として宝塚歌劇団に入団し、花組に配属されました。
入団時の成績は3番という優秀な成績でした。
しかし、トップスターへの道のりは決して順調ではありませんでした。
転機となったのは2021年の「銀ちゃんの恋」での東上公演初主演でした。
この公演は破格の扱いで、ポスターは1人写り、破線上もたった1人という異例の待遇でした。
通常、この作品は銀ちゃん・ヤス・小夏の3人写りなのですが、あえて1人写りにしたことで、劇団の水美舞斗さんに対する扱いの変化が見て取れました。
そして2022年6月、「巡礼の年/Fashionable Empire」でついに2番手羽根を背負うことになります。
この配役発表は通常より遅れており、水美舞斗さんを上げる構想が劇団内で固まったためと分析されています。
しかし、その約半年後の2022年12月に専科異動が発表されるという、予想外の展開となりました。
「専科へ行った理由」は?
水美舞斗さんの専科異動について、劇団からの公式な理由説明はありません。
しかし、宝塚ファンや専門ブロガーの間では、いくつかの要因が複合的に影響したと考えられています。
まず大きな要因として挙げられるのが、花組内での人事的なジレンマです。
同期の柚香光さんがトップスターとして君臨する中、宝塚では同期同士のトップ引継ぎはタブーとされてきました。
さらに、VISAガールでトップスター候補の永久輝せあさんが花組に組替えしてきたことで、水美舞斗さんの花組での昇進路線がより困難になったとの見方があります。
もう一つの重要な要因は、95期生全体の処遇問題です。
「花の95期生」は豊作世代として知られ、7人の「神7」が存在します。
既に礼真琴さん、柚香光さん、月城かなとさんがトップスターに就任しており、残るメンバーをどう処遇するかは劇団にとって重要な課題でした。
この状況で劇団が選択したのは、水美舞斗さんを将来のトップスター候補として専科で温存する戦略だったと推測されます。
つまり、花組ではトップになれないが、落下傘トップにするために「専科を人事の仮置き場にする」という手法です。
専科配属とは何を意味し得るか
宝塚歌劇団における専科は、特別な位置づけを持つ部署です。
どの組にも属さず、必要に応じて各組の公演に出演したり、外部出演を行ったりする柔軟性があります。
専科への配属には、大きく分けて二つのパターンがあります。
一つは、長年の功労を称えて配属されるベテランスターのケース。
もう一つは、将来的に他組でのトップスター就任を見据えた戦略的配属です。
後者の例として、湖月わたるさんや北翔海莉さんのケースが挙げられます。
両者とも専科を経て落下傘トップスターとして他組に就任しました。
特に湖月わたるさんは、専科異動前に短期間でも正2番手を経験しており、水美舞斗さんのケースと類似点が多く指摘されています。
専科配属の利点は、組の制約にとらわれない活動ができることです。
外部出演や他組への客演など、多様な経験を積む機会が得られます。
一方で、所属組がないことによる不安定さや、ファンにとっては次の展開が見えにくいという面もあります。
専科行き=「路線落ち」なのか?
水美舞斗さんの専科異動を「路線落ち」と捉える向きもありますが、これは必ずしも正確ではないと考えられます。
むしろ、トップスター就任のための戦略的配置と見る方が適切と言えるでしょう。
その根拠として、専科異動前に2番手羽根を背負わせたことが重要です。
落下傘トップになるには「正2番手」の経験が必要条件とされており、劇団はこの条件をクリアさせた上で専科に異動させています。
もしトップにする気がないのであれば、番手ぼかしを続ける方が穏便だったはずです。
また、水美舞斗さんに対する劇団の扱いを見ても、「路線落ち」とは考えにくい状況があります。
2023年の宝塚市防火協会創立70周年記念式典のポスターに選ばれ、過去にこのポスターに選ばれたのはトップスターになった方ばかりです。
さらに、「宝塚GRAPH」のスペシャルポートレートや「anan」での単独8ページ掲載など、通常の2番手を上回る扱いを受けています。
外部舞台に出た理由・意味とは?
水美舞斗さんは専科異動後、積極的に外部出演を行いました。
2024年には「HiGH&LOW THE 戦国」と「ベルサイユのばら50〜半世紀の軌跡〜」という2つの重要な外部舞台に出演しています。
「HiGH&LOW THE 戦国」では、LDHの男性俳優陣と共演し、現役宝塚生として男役での初の外部出演を果たしました。
水美舞斗さん自身も「男性の中でより男性に見える方法」を模索する貴重な経験だったと語っています。
この出演により、宝塚ファン以外の観客層にも認知度を広げることができました。
「ベルサイユのばら50〜半世紀の軌跡〜」では、宝塚の代表作品の記念公演にアンドレ役として特別出演しました。
これは宝塚の歴史と伝統を象徴する作品への出演であり、劇団からの期待の高さを示すものと言えるでしょう。
これらの外部出演は、専科スターの新しい活用法として注目されます。
組に属さない専科の特性を活かし、宝塚ブランドの外部展開と新ファン層の開拓を同時に実現する戦略的な取り組みと位置づけることができます。
なぜ今、専科→宙組へ?
2024年12月16日に発表された大規模組替えで、水美舞斗さんは2025年4月28日付で宙組へ組替えされることが決まりました。
この人事には、宙組の構造的問題を解決するという明確な目的があると考えられます。
宙組は発足から26年間、生え抜きトップスターを輩出していないという課題を抱えていました。
さらに、2023年の事件の影響による悪いイメージからの脱却も急務でした。
こうした状況の中で、桜木みなとさんが10代目にして初の生え抜きトップスターに就任することになったのですが、桜木さんだけでは宙組の立て直しには不十分だったと推測されます。
そこで劇団が選択したのが、非トップスターの中で最もファンが熱い水美舞斗さん。
水美舞斗さんの人気と実力により、宙組のチケット問題解決と組の活性化を図る狙いがあると見られます。
同時に、この人事は水美舞斗さんが再び同期の下につくという状況を生み出しました。
95期生の同期並び自体は前例がありますが、
水美舞斗さんが花組で柚香光さんの2番手を務めた後、専科を経て今度は宙組で桜木みなとさんの2番手になるという、
同一人物が複数の同期トップの下で2番手を務めるというケースは特殊な状況と言えるでしょう。
今後のチェックポイント
水美舞斗さんの今後を占う上で、注意深く観察すべきポイントが3つあります。
公式発表・公演資料では、配役順、相関図、ポスター、クレジット位置、公演日程などの一次情報が重要です。
これらは劇団の意図を直接的に反映するものであり、水美舞斗さんの処遇や将来性を判断する客観的な材料となります。
特に注目すべきは、2025年9月13日から始まる宙組大劇場公演「PRINCE OF LEGEND/BAYSIDE STAR」での扱いです。
この公演は、桜木みなとさんのトップスター就任後、水美舞斗さんが宙組生として初めて参加する大劇場公演となります。
ここでの配役や役柄の重要度、桜木みなとさんとの関係性の描かれ方は、水美舞斗さんの宙組での立ち位置や今後の方向性を示す重要な指標となるでしょう。
また、宙組での初公演となった「RED STONE」では主演を務めましたが、今度は組全体での公演にどのように組み込まれるかが見どころです。
2番手としての扱いを受けるのか、それとも特別な位置づけになるのか、ポスターや公演資料での扱いから劇団の意図を読み取ることができます。
出演”質”の推移も重要な指標です。
主演・準主演格の有無、物語上での役割の重要度、ソロやデュエットの配置など、単なる出演回数ではなく、内容の充実度を見極める必要があります。
「PRINCE OF LEGEND」では、水美舞斗さんがどのような役柄を任され、どの程度の存在感を発揮できるかが、トップスター就任への道筋を示すことになります。
同期である桜木みなとさんとの舞台上での chemistry(相性)や、観客からの反応も重要な要素です。
17年ぶりに同じ舞台に立つ二人の共演がどのような化学反応を生み出すか、それが宙組の新体制にどのような影響を与えるかが注目されます。
外部・媒体露出については、公式に告知される範囲での活動が参考になります。
雑誌の表紙やインタビュー、外部イベントへの参加など、劇団が水美舞斗さんをどの程度プッシュしているかが分かります。
これまでの「宝塚GRAPH」や「anan」での扱いのように、通常を上回る露出があれば、劇団の期待の高さを示すシグナルと受け取ることができるでしょう。
また、「PRINCE OF LEGEND」公演期間中やその前後での メディア展開、特別番組への出演、ファンイベントなどの活動も、水美舞斗さんに対する劇団の戦略的な位置づけを知る手がかりとなります。
まとめ
水美舞斗さんの専科異動から宙組組替えまでの一連の人事は、決して「路線落ち」ではなく、むしろ将来のトップスター就任に向けた戦略的な配置と考えるのが適切でしょう。
95期生という豊作世代の処遇問題、花組での同期関係の制約、宙組の構造的課題など、複数の要因が複雑に絡み合った結果として、この人事が生まれたと理解できます。
外部出演での経験蓄積、メディアでの破格の扱い、そして宙組での新たなスタート。
これらすべてが、水美舞斗さんのトップスター就任に向けた布石として機能している可能性があります。
同期の桜木みなとさんとの関係性がどのように展開するか、宙組でどのような活躍を見せるかが、今後の展望を左右する重要な要素となるでしょう。
水美舞斗さんの歩む道のりは、95期生全体の処遇や宝塚の未来にも大きく関わってくることになります。
公式発表や公演での活動を注意深く見守りながら、その行方を見届けていきたいと思います。
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